打突動作(手の動き)
今まで伝えられてきたありがちな教え方
これまでよく言われてきた教え方はこんな感じだろうか。
・「大きい打ち」ができてからでないと、「小さい打ち」を教えてはならない
→「大きい打ち」の手の使い方は「小さい打ち」のそれとは全然違うのでむしろ先に小さい打ちを教えてよい。
・小さい打ちは、肩(もしくはひじ)を使って振り上げ、振り下ろす
→小さい打ちで肩やひじはほとんど使わない。左こぶしと右こぶしを順番に押すだけである
・大きい打ちの時は、振り上げた時の竹刀の角度が床に対して45度になるように振り上げる
→角度45度に何の意味もない。重要なのは左手の小指薬指を緩めず、振り上げた時点ですでに振り下ろす準備ができてるか、ということである。結果的に竹刀の角度は水平くらいになっているはず。
ここでの新しい教え方
一般的に、竹刀を頭の上まで振りかぶって打つ「大きな打ち」→手元でコンパクトに打つ「小さな打ち」の順番に教えられることが多いが、初心者は「足と手の動きを一致させる」練習をするのに小さい打ちを使う方がやりやすいのでそちらから教える。試合にも直結できるし効率的である。
「小さい打ち」の手の動き
小さい打ちで重要なのは、竹刀の束(つか)の真ん中を回転中心にして動かすことである。図1のように、束の真ん中の「×」を中心にして、左手で押しながら右手首を立てて竹刀の先を上げ、すぐに右手を押して竹刀の先を振り下ろすイメージが大切である。
【図1】小さい打ちの竹刀の動かし方の原理
小さい小手打ち
構えた位置から腕を上げず、その高さのままで行う。手首と手のひらの力の使い方(剣道用語で「手の内」と呼ぶ)の感覚をつかむよい練習になる。
①構えた状態から、竹刀の束(つか)の真ん中あたりを回転中心にして、左こぶしを下に落とし、右手首をちょっと上に向けて剣先を立てる。(決して右手で竹刀を引き上げてはいけない)(図2の上)
②上に上がった剣先を、相手の小手に向かって一直線に伸ばすように右手の親指と人差し指の”V字”で押す(図2の下)
※上記の一連の動きを「ひだりみぎ!」と一拍子ですばやくできるようにする。
※打った瞬間、右手のひらの中で小さく「パシッ!」と音が聞こえるとよい。(「手の内が”さえてる”状態」と呼ぶ)
【図2】小さい小手打ち
小さい面打ち
面は、束の中心で回転させるのは小手と同じだが、それを両手を前に伸ばしながらやる。
①構えた状態から、竹刀の束(つか)の真ん中あたりを回転中心にして、左こぶしを前に出し、右手首を小手打ちよりも上に向けて剣先を立てる。(同様に右手で竹刀を引き上げてはいけない)(図3の上)
②上に上がった剣先を、相手の面に向かって一直線に伸ばすように右手を前に伸ばし、左手は胸~みぞおちの高さくらいまで上げる(図3の下)
※小手打ちと同様、上記の一連の動きを「ひだりみぎ!」と一拍子ですばやくできるようにする。
※面を上から叩こうとするあまり、左手が上に上がり過ぎるとダメ。左手首が内側に入らず「死んだ」状態になって打ちが遅く、弱くなる。(図4)
【図3】小さい面打ち
【図4】悪い例(左こぶしを上に上げ過ぎ)
小さい胴打ち
振り上げるまでは面打ちと同じだが、振り下ろすときの竹刀の軌道と、左手を滑らせて右手に寄せて打つところが違う。
「大きい打ち」の手の動き
正直言って、大きな打ちは実戦ではほとんど使われない。たまーに「小手抜き面」で使われる程度である。ただし、素振りや基礎練習のためにできる様にしておく。大きく早く振れるようになると体幹が鍛えられ、結果的に小さい打ちも鋭く早くなっていく。また、掛かり稽古をなかなかやめてくれない意地悪な大人の脳天にダメージを与えるのにも使える。
大きい面打ち
①両腕は構えた形のまま、肩を中心に大きく振り上げる。左手は、左脇をしめ、左手首を絞った状態で、左手の甲の筋肉を使って竹刀の先を持ち上げるイメージ。右手は小指と薬指で下から支えてすくい上げるイメージ。
②左こぶしが頭の上にくるくらいまで振りかぶる。この時、左手の小指薬指は緩めず、振り上げ終わった時にはすでに振り下ろす準備にはいっている。(図4の上)
③左手の小指薬指を使って竹刀の先が円を描くように大きく振り出しながら引き下ろす。このとき、竹刀の先が「ブォォ・・・」と加速するイメージを持つ(竹刀が”走る”と言う)
④左手が自分の胸くらいの高さで竹刀を止める。腕の力で無理やり止めるのではなく左手首を内側に思い切り入れてストッパーをかけることで止める。(図4の下)
【図4】
※「大きい小手打ち」は、さらに使われることがなく、剣道形の二本目で使われるくらいである。ほぼ大きい面と同じだが、振りかぶりを「相手の小手が見えるくらい」まで振り上げて、相手の小手を打ち込むだけの違いなので省略する。
※「大きい胴打ち」も、ほとんど使われることがないので省略するが、小さい胴打ちの振りかぶりを「相手の胴が見えるくらいまで」振り上げて、あとは小さい胴と同じようにすればよい。
以上が打突動作の手の動きである。次回は足と体の動きを説明する。
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