構えのコツ⑤左こぶしは体の中心線よりげんこつ一個分左側、右こぶしを体の中心に置く。剣先は相手の左目と喉の間に。
これも、指導者によっては「左こぶしは体の中心へその前、剣先は相手喉につけて中心をとる」と口を酸っぱくして言うのではないだろうか。この教え方がダメな理由もこの記事の後半に書いておく。
体得のコツ
④の項目で腰をまっすぐ前に向けたら、竹刀を自分から見て「1時の方向」に立てる(図1)。次に、両手の手首の角度をそのまま、左脇を軽く締めながら前に持ってきて構える。左こぶしは中心線よりげんこつ一個分左側に、右こぶしは中心線上に置く(図2)。左手首を右より強めに絞り、刀だとすると刃が若干左斜め下を向くようなイメージで持つ (図3の右側の写真)
剣先の付けどころは、延長線が相手の左目と喉の間くらいを行き来するように構える。延長線が目や喉なので、剣先の高さは相手のみぞおちくらいになるはずである。自分の左足→左腰→左脇→左こぶし→剣先 が同じ平面の中にしっかり固定され、一体になっているようなイメージを持つ。
【図1】
【図2】左こぶしは左腰前に固定
【図3】両手首の角度(※見やすくするためものさしを使い、多少大げさにやっている)
(×)真っ直ぐ構えた状態
(○)左脇を締め、左手首を絞り、左こぶしを左にずらした状態
こうする必要がある理由
※読みたい人だけ参照
左足の裏が床を押して伝わってくる床からの反力が、左腰→左脇→左こぶし→剣先と伝わって、目の前の打突部位を打たなければならない。ところが、左こぶしを体の中心に置くと、左足から伝わってくる床からの反力が、左足→左腰→左脇まで伝わってきた後、左こぶしのところで力の向きがずれてしまう。そのため、力の流れがそこで途切れ、効率的に剣先に力が伝わらない。
【図1】
また、剣先を相手の喉につけると、自分の小手が相手から見えやすくなり、打たれやすくなる原因になる。剣先を相手の左目につけることにより、自分の小手を相手から隠し、攻守バランスの取れた構えとすることができる。
「左こぶしは体の中心へその前、剣先は相手喉につけて中心をとる」という教え方は、小さい子供に教えるにはいいが、ある程度大人になって理論が理解できるようになったら、ちゃんと本当のことを教えるべきだと思う。