骨盤と剣道の関係
上達の近道は、「骨盤の向き」を理解し意識すること
私は、剣道を子供達や初心者にわかりやすく効率的に教えるため運動理論的に説明できないか考えてきたが、最終的に、避けて通れないとても重要なことに行きついた。
「構えについて」でも説明したが、剣道では、骨盤の向きを前傾(反り腰)ぎみにしなければならないということだ。
あ、ちなみに、反り腰と言っても、背中全体で「反り返る」と言う意味ではない。あくまで、体軸はそのままで、骨盤だけを前傾にする、結果的に脊椎は真っすぐ並び、腰椎のところだけがへこむような状態になることである。横から見るとお尻が突き出ているように見える。
インターネットで探すと、色々な運動理論の記事が出ており、それらでは人間はタイプとして「かか〇型」「つま△き型」だとかに分類され、そしてその中で「自分はどちらの型か」の見分け方や、この型の場合はこうするといいとか、こうしないとうまくいかないとか書かれている。これらは突き詰めて考えると、結局全て骨盤の前傾(反り腰状態)/後傾(猫背状態)の事を言っているだけだと思う。そして、そのスポーツに合っていない骨盤の向きの人は、いろいろ工夫して多少リカバーすることはできたとして、そのまま練習を続けてもなかなか上達できないのではないかと思う。普段の生活で骨盤が前傾ぎみの人と、後傾ぎみの人では体の使い方が全く違うので、例えば骨盤前傾の人から見たら普通にできる「簡単」なことでも、もう一方の骨盤後傾の人は全然できないことだったりする。このことを理解していない指導者は、自分の型に合わない選手に対し「なんでこんな簡単なことができないんだよ」とか言ったりするので、教えられてる選手の方は悩んで苦しむことになる。
剣道では、昔から、
・姿勢を正しく胸を張れ
・左のひかがみ(膝の裏)は曲げるな
・すり足の時は右足のつま先を上げるな
・踏み込みの時は相手に足の裏を見せないように
・戻り足(踏み込みのために振り上げた足がまた振り子のように自分の方に戻って着地すること)にならないように
などと言われるが、試しに、骨盤の向きをわざと後傾(猫背)/前傾(反り腰)にして試してみるとよい。まさに、後傾にすると上記の悪い例えのようになり、前傾にするとその逆の良いとされる状態になるはずである。
このように、不幸にして自分の普段の骨盤の向きが、自分のやりたいスポーツに向いていなかった場合、上達するためには、自分の骨盤の向きを矯正してスポーツに合わせるしかない。難しく考える必要はない。例えば剣道が上達したかったら、骨盤後傾(猫背)ぎみだった人は、単純に、軽く骨盤前傾(反り腰)ぎみになるよう、普段の生活からクセを付ければよいだけのことである。今すでにそうなっている人は、もうそのまま自信を持って練習を続ければよい。(ただし、それ以上やりすぎると上体に不要な力が入ったり、腰を反らしすぎて痛めてしまうので、あくまでも軽くでよい)
剣道では、この骨盤前傾状態の姿勢のことを「腰が立った」もしくは「腰構えができた」状態と表現している。
骨盤の向きと、体軸の向き、重心位置は全く独立の話
他の章でも言っているが、剣道では重心は左足にかける必要がある。左足にかけろ、というと、体軸を後ろに反らしてのけぞってしまう人がいたりする。重心を左足(後ろ足)にかけろと言われたから、頭を後ろにぐいっともっていって重心を後ろに移動しているつもりなのだろう。が、そういう意味で言っているのではない。あくまで、体軸は上を向けた状態のまま、お尻だけを後ろに引く(骨盤を前傾させた状態で)という意味だ。体軸が後ろに傾くと、攻め合いで相手が出てきたときに何も対応できなくなってしまう。また、重心を左足(後ろ足)に乗せたとき、骨盤が後傾だと、とっさに前に出られなくなってしまう。とっさに前に出られないから、やむを得ず体重を前足にかけてしまう。でも、前足に体重かけると、前足から一歩で前に出られず(体重がかかった足は前に出せないから)左足を継ぐ打ち方になる。結果、モーションが一呼吸遅くなり、起こりが見えやすくなって、相手に打たれる好機を与えることになる。
根本的に違う。骨盤を前傾させることで、体軸を後ろに倒さずに体重を後ろ足に置くことができ、
骨盤を前傾させることで、体重が後ろ足にあってもとっさに前に出ることができるのである。
この話は、結構な熟練者や高段者でも理解できない人が多く、何言ってんの?という態度をされる。だが、剣道の構えの超重要な本質なので、理解できるのとできないのとでは、今後の自分の剣道修行や剣道指導の効率に大きくかかわってくるので、是非理解してほしい。
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